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民泊は定着したか――課題と可能性

北海道の取り組みとムスリム対応の民泊の可能性

川久保文佳川久保文佳

2019/11/21

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人気の北海道――民泊の現状


純和風の民泊は外国人にも人気

2019年6月で1年を経過した住宅宿泊事業法(民泊)ですが、観光庁のまとめによると6月時点での北海道内の届け出数は2293件と東京大阪に次いで全国第3位となっています。
また、2019年4月1日から5月31日までの61日間の宿泊者数(実人数)は2万9010人。延べ宿泊者数は7万2824人(平均宿泊数約2.5泊)。施設の平均営業日数は14.4日だったようです。


北海道の千歳から札幌へ向かう国道36号線沿いにある民泊の周辺にはアウトレットモールも

第3位での実績にはしっかりとした数字の公表や説明会の実施など、様々な真剣な取り組みをされている様子が感じられます。

北海道は観光地域として民泊としてのポテンシャルも高く、注目のエリアです。自治体としての北海道の取り組みとして、北海道民泊ポータルサイトが運用されています。他にもある自治体の民泊サイト、例えば東京都などのものとは違って、説明会の日程や事例などが丁寧に取材されて載っているのが北海道のサイトで、自治体サイトのなかでは使い勝手のよいサイトになっています。

また、北海道民泊ポータルサイトは北海道や国の民泊に関するサイトのリンク集をまとめており、各種届出や各種資料などの閲覧もできるようになっています。それに加えて、「ふれあい民泊推進セミナー」が、北海道主催・札幌市共催で行われるといった情報も入手できます。倶知安町(ニセコ近隣)で11月18日(月曜日)、小樽市で11月19日(火曜日)行われたこと、ほかにも富良野市、旭川市、函館市、札幌市で行われるなどの情報も掲載されています。これらの情報は北海道民泊事例集――人とふれあい、地域とつながるということで、優良事例も当事者の声が詳しく載っていて、参考になります。

加えて、行政処分の公表一覧、宿泊日数・苦情件数などのマイナス的な情報もしっかりと掲載しており、北海道として民泊に対する安心と安全を確保するための、情報の共有を積極的に行っていることがうかがえます。

実は、全国的に民泊の違反件数も増えており、摘発も多くなっています。

そのため観光庁では10月23日、民泊仲介サイトに掲載されていた7万1千件の民泊物件のうち、3%の2154件が違法だったとの調査結果を発表しました。これらの違反物件は仲介業者68社が観光庁に提出した物件リストと家主からの届出情報を各自治体が照合し発覚しました。違法内容は住宅宿泊事業法の規定に反していて 事業者の名称や届出番号、住所が一致しないといった問題もあったようです。

観光庁は、健全な民泊サービスの復旧を目指して、新しく民泊運営システムの開発に着手するという発表を行っています。こうした違反物件は海外無登録仲介サイトで掲載物件情報を収集後、住所などの詳細情報の集約や一覧化を行うことになっていて、運用開始は2020年を予定しています。

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ムスリム対応民泊の課題と可能性

民泊の動きとして、もう1つ注目すべき動きがありました。
2019年11月7日(木曜日)東京の帝国ホテルで「マレーシア ハラルビジネス機会セミナー」が開催。この中で、ハラルフレンドリートリップの可能性についてお話がありました。

HDC(Halal Industry Devekopment Corporation・ハラル産業開発公社)のHanisofian Alias氏から、ムスリムフレンドリートラベル拡大の可能性があり、躍進する市場ですというお話でした。

ムスリム市場は拡大して、2023年にはムスリム市場全体の規模は6兆8000億ドル達するという数字の予測がされています。また、日本では、将来の予想ではムスリム(※1参照)の人が日本に観光に訪れる予想は500万人ということでした。もちろんそのための宿や食事の需要拡大も見込まれています。

こうした成長が予想されるムスリムの方を日本に受け入れるためには「何が必要か?」というお話は興味深く、現状はまだまだ他国に比べると、整備されているとは言い難い状況のようです。

例えば、日本以外の他の国を訪れると、空港でもムスリムの礼拝をする場所であるプレールームの表示や、ムスリムの方が安心して食事できる場所も見つけやすくなっているということです。一方、日本では、安心して食事ができる場所を探そうとしても情報が少ないといいます。スマートフォンを使ってムスリム関連の情報を得ようとしても、ダウンロードが必要で、さらにムスリムの方が活用できるアプリを探すのも難しい状況だというお話でした。

加えて、食事でレストランなどを訪れても、ムスリムの方が食しても大丈夫なことを証明する「ハラール」のマークが判別しにくいということもあるようです。その理由は、日本にはムスリムの方が安心して利用できるための“ハラルマーク”が100ほどあり、日本独自のハラール認証団体が独自に発行しているものも多いようです。

しかし、マレーシア政府の外郭機関であるマレーシア連邦政府首相府イスラ-ム開発局(JAKIM)はマレーシアで唯一ハラール認証を行っている機関と連動しているムスリムの認証機関はそのうちの7つだけだということでした。

ムスリムの宗教的なもの対するインフラ的な整備はまだまだのようですが、東京都と大阪府ではムスリムフレンドリートリップに向けた民泊があります。こうした民泊は空いたビルやマンションのフロアーを利用して作られており、空き家や空きビル対策の1つとなっているようです。

こうした一方で、一般の民泊の物件も少しずつ増えてきています。しかし、ムスリムの方空き家を民泊として利用する際には、ただ、宿泊用のお部屋を作るというだけではなく、それぞれの国や宗教に合わせた特徴ある民泊への活用が大切だと感じます。

●東京都江東区にあるムスリム対応の民泊
http://moosas.net/tokyo

●大阪でのムスリム対応の民泊
http://moosas.net/osaka

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この記事を書いた人

一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事

一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事 北海道函館市生まれ。現在の札幌国際大学 卒業後、リクルート住宅情報事業部にてライターを務めた後、IT企業を経て不動産関連事業へ転身。その一方で、化粧品とサプリメントのコンサルティングや専門家としてのアドバイザー務める。海外派遣先では、フィリピン・タイ・カンボジア・マレーシアなどで日本への輸出入をテーマにセミナーを行うなどマルチに活動している。

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